第5回羽倉賞受賞記念講演会 開催レポート

日時:7月4日(月)13:30~17:20
会場:フォーラムエイト 東京本社 セミナールーム

最新のICT技術を活用した最先端表現技術に関する発表が多数
今回も多様な分野の力作について、昨年の第5回羽倉賞受賞者の皆さまにご講演いただきました。
分野を問わず最先端の表現技術を活用した「作品」および「取り組み」について、昨年のデザインフェスティバルでのプレゼンテーションから、さらに深く踏み込んだ内容でお話しいただきました。質疑応答では「こういった使い方ができたらおもしろそう!」「イベントで一緒に何かできそう!」といった次のステップにつながる活発なやりとりがありました。総括として、表技協 長谷川 章会長から「最高の技術が集まった。多岐にわたる表現、技術を組み合わせての表現、新しい出会いがあった」と語気強く語りました。
この秋、第6回目を迎える羽倉賞の作品募集が始まっています。締め切りは10月1日までです。どうぞ奮ってご応募ください。
プログラム

13:30~13:35 開会挨拶
13:35~14:00 奨励賞「味わうテレビ TTTV」
明治大学 宮下芳明 様
14:00~14:25 奨励賞「天空のナイトクルージング楽しみ方ガイド」
みなかみ町観光協会 鈴木和幸 様
14:25~14:50 奨励賞「川湯の森 ナイトミュージアム 森の図鑑」
ALAKI株式会社 伊東直郎 様
14:50~15:15 優秀賞「デジタルカメン」
公立はこだて未来大学 竹川佳成 様
15:15~15:30 休憩
15:30~15:55 奨励賞「Layers of Light/光のレイヤー」
石川将也 様
15:55~16:20 フォーラムエイト賞「Before/After VR」
NHK放送技術研究所 川喜田 裕之 様
16:20~16:45 優秀賞「蛍光磁性流体のメディアアートへの応用」
電気通信大学 児玉幸子 様
16:45~17:10 羽倉賞「Sound Scope Phone」
理化学研究所 浜中雅俊 様
17:10~17:20 まとめ・閉会挨拶
17:30~19:00 ネットワークパーティ
講演内容
■奨励賞「味わうテレビ TTTV」
明治大学 総合数理学部 先端メディアサイエンス学科 宮下芳明 様
食べたい料理名を声に出すと、その映像が表示され、画面を舐めるとその料理の味がします。味センサで取得されたデータに基づき、10種類のスプレーで透明なシートに味が噴霧、それがベルトコンベアのように巻き取られて画面の上にくるという仕組みです。ほぼ全ての料理の再現ができ、基本五味のみならず、渋味・辛味・アルコール味も表現可能です。視聴覚に加え味覚の記録と再現が可能に。

■奨励賞「天空のナイトクルージング楽しみ方ガイド」
みなかみ町観光協会 鈴木和幸 様
群馬県みなかみ町 谷川岳天神平で開催された星空鑑賞イベント「天空のナイトクルージング」。谷川岳の山並みにプロジェクションマッピングを投影し集客増の取組となったが、さらにイベントを楽しんでもらう為、公式HP内で「天空のナイトクルージングの楽しみ方ガイド」を開設。会場内のウォークスルー体験や女性2人が会場内を楽しむ様子を撮影した映像、星空タイムラプス映像等を公開。

■奨励賞「川湯の森 ナイトミュージアム 森の図鑑」
ALAKI株式会社 伊東直郎 様
国立公園の自然学習の場にライトアップを利用する日本で初の試みとして、2020年10月に阿寒摩周国立公園で社会実験「川湯の森ナイトミュージアム」が開催。「図鑑の森」地区では、森の中に設置されたQRコードを読み取ると、カメラを通して野生動物の3DCGを表示するAR体験を提供。動物と一緒に写真撮影を行う機能や、ナレーションを再生して動物に関する知識を得る機能も実装した。

■優秀賞「デジタルカメン」
公立はこだて未来大学 竹川佳成 様
デジタルカメンは、「仮の顔」として好みのCGキャラクターを表示する軽量薄型有機ELディスプレイを搭載し、裏面に装着者の表情の変化を測定する反射型フォトセンサアレイ40個を組込んでいる。表情の変化に伴う顔の各部位における皮膚の微小変位をセンサアレイで計測し、サポートベクターマシンを用いた表情認識モデルを構築する事で、装着者の表情および口の動きをリアルタイムでアバターの表情へと反映させる。実験では、平均79%の認識精度を達成し、被験者からは自身の表情や発話が違和感なくアバターの表情に反映されたという評価が得られた。

■奨励賞「Layers of Light/光のレイヤー」
石川将也 様
蛍光材料を含んだ透明スクリーンで構成された層構造のディスプレイにプロジェクションした映像が、蛍光材料の物性である励起・反射により、各層に分離して表示。赤・緑・青を分離することで最大3層の立体表示が可能で、スクリーンを造形したり、動かすことで多様な表現が可能に。単に装置の発明だけでなく、ディスプレイでの表現手法を、映像作家でもある作者が開発し作品化している点が特徴。

■フォーラムエイト賞「Before/After VR」
NHK放送技術研究所 川喜田 裕之 様
同じ場所で異なる時期に撮影した2つの360度映像を切り替えながら視聴することで、細かい違いに気づくことができる表現技術。例えば、災害直後の映像と復興中の映像を比較することで、あたかもその場にいるような臨場感を伴いながら、災害の凄惨さや復興の状況を能動的に体験する効果が期待できる。様々な利用者を想定し、VRゴーグル用とタブレット用の2つのアプリを開発した。

■優秀賞「蛍光磁性流体のメディアアートへの応用」
電気通信大学 児玉幸子 様
磁性流体メーカーである株式会社フェローテックマテリアルテクノロジーズによる新技術「蛍光磁性流体」をメディアアートに応用する取り組みを、これら企業の支援を得て開始した。蛍光磁性流体を、「磁性流体彫刻」の立体造形に応用し、ブラックライトおよびその他の照明装置の利用と、蛍光磁性流体を立体表面に流動させるための適切な電磁石とコンピュータ制御によって、これまでにない先端的な動く立体造形表現と映像表現へと展開した。

■羽倉賞「Sound Scope Phone」
理化学研究所 浜中雅俊 様
ヘッドフォンを装着して、スマートフォン(iPhone)にインストールされたSound Scope Phoneを起動し、再生ボタンを押すと、ヘッドフォンから聞こえる音響空間上に、ユーザの周囲360度を取り囲むように10種の楽器音が出現。Sound Scope Phoneでは、フロントのカメラで得た画像をAIで処理して、iPhoneから見えるユーザの頭部方向を検出する。あたかも周囲を演奏者に取り囲まれたかのような音楽体験が可能。

>>第5回羽倉賞 受賞作品一覧